「私は吸血鬼バニー最高!!」
「だからいい加減にしやがれってんだ!!!」
定期的に出てくる大量のスラミドロの退治を終わらせたあと、帰り道に現れたポンチをロナルドは拳で片付けた。
VRCの到着を待つ間、気を失って縛られている吸血鬼に一緒に着いてきていたドラルクがぴょこぴょこと近寄るのを見てその腕を掴む。
「近寄るなよ。危ねぇぞ」
「大丈夫だよ。ジョンもいるし、気を失ってるんだろう?」
「いつ目が覚めるかわかんねえだろ」
縛ってあると言っても、出会ってすぐ殴り飛ばしたため相手の力がわからない。目を合わせたら催眠にかかるタイプだったら面倒だ、とロナルドはドラルクの腕を引っ張った。
「ふむ。吸血鬼……バニー最高、とか言ってたか?」
「あ?ああ、なんかそんなこと叫んでたな」
「バニー…bunny…、兎だな?」
ロナルドが手の力を緩めた瞬間にすり抜けたドラルクは、倒れている吸血鬼の周りをゆるゆると歩きながら呟くと足を止める。
「まあそうだけど、それが何だよ」
「いや、どんな能力なのかなって。兎……兎が沢山出てくるとか」
「出してどうすんだよ」
「兎の可愛さで人間をメロメロに?」
「ふはっ、くっだらね」
兎にメロメロにされる光景を想像したロナルドは、思わず吹き出すように笑った。
「ここに来る吸血鬼は大体くだらないだろう?あとは…」
「あとは?」
「人間をバニー姿にする」
「うわ、悪夢」
ドラルクが楽しそうにケラリと笑って告げた言葉に、うげぇ、とロナルドは眉を顰める。
バニー姿にはいい思い出は無い。
「君、うちの親族の前でバニー姿になってるじゃないか」
「だから嫌なんだよ…っと、回収きたな」
車のエンジン音に、ロナルドは倒れていた吸血鬼を縛っていた縄を掴んだ。車を降りてきた所員に引き渡し、書類にサインをした後ひとつ息を吐き出す。
「はー、……ったく、忙しねぇな、ほんと」
「愉快な町じゃないか」
「てめーはなにもしねえから楽だろうよ。おら、帰るぞ」
帽子をかぶり直し、ロナルドはドラルクへと手を伸ばす。あまりに自然なその動作に、ドラルクは満足気に笑みを浮かべたあと手を伸ばした。
「ねえ、ロナルドくん」
「なんだよ」
手袋越しに触れるロナルドの体温が心地よくて更に微笑んだドラルクの肩で、ジョンも嬉しそうに微笑む。
「明日って昼になにか予定ある?」
「別にないけど?」
「じゃあ、明日は事務所休みにしてよ」
「はぁ?なんでだよ」
「いいから。あと、帰ったら一昨日買った遮光カーテン取り付けようよ」
「はぁ?!なんだよ突然」
「私、さっきの吸血鬼の催眠、かかっちゃったかも」
「え?!」
立ち止まったロナルドに、一歩大股で近づいたドラルクはその耳元に顔を寄せた。
「私のバニー姿、見たくない?」