寂しいなんて気持ちは、とうの昔に無くなっていた。
それよりも、一緒にいられることの幸せの方が強い。
どんな形であれ、ドラルクは今現在、俺と共にある。
いついかなる時も、共にある。
けれども、最近時折ドラルクの一部が離れていくことがあった。それは俺が眠る時。
意識を完全に落とすことはないが、身体が休息を求めている場合はそれに逆らうことができない。
人間の体は、面倒だ。
【大丈夫だから、眠りなさい】
「…大丈夫だ…」
【人の体は脆いんだよ、ロナルドくん】
「俺は、大丈夫だ」
【…何を怖がっているの?】
隠し事なんて出来やしない事は分かっている。
それでも、唯一のドラルクにそれを言うことは躊躇われた。
【…私は、どこにもいかないよ】
「ドラルク…俺は」
【私は君と共にある】
「分かってる、だけど」
俺が目を閉じている間、お前が何をしているかを分からないのが怖いだなんて、ただの我儘なのは分かっているけれども。それでも、一欠片でも俺の知らない場所でお前を失ってしまったとしたら。
【ロナルドくん】
体の周りに漂う塵を、つかもうと手を動かす。
【君からは離れられない】
「俺が、死ぬからだろ」
【私はもう、君の一部だ】
「それでもお前は、俺がいなくても生きられる。この塵も、心臓も、お前の体になれば」
【それ以上言うのであれば、私は今すぐこの心臓を自分で破壊するよ】
「自死できないだろう?お前は」
【うん。だから、君の手を使って、君の銃で、君の心臓を撃つ】
ドクン、と強く打った心臓は、俺の鼓動ではない。
「…ドラルク…」
【君の手で、私と君を殺して、消えよう】
「…そんなの」
【できるんだよ。ロナルドくん。君が望むなら】
「……望まない」
【うん。だから、少し眠りなさい…】
ふわりと揺れる塵が頬を撫でる。
お前が何をしているかは分からないままで。
俺は今日も目を閉じる。
僅かな塵を、掌に閉じ込めたままで。