ハッピーハッピーハロウィン

パンプキンミートパイ。
パンプキンハンバーグ。
パンプキンマカロニグラタン。
パプリカの肉詰め。
パンプキンとポテトサラダが乗せられたサラダ。
ハロウィンクッキー。
かぼちゃのマフィン。
パンプキンケーキ。
そして、ワイン。

テーブルの上に所狭しと並べられた料理の数々に、ロナルドは目を丸くした。
ハロウィン当日は毎年町には下等吸血鬼たちが群がり、ロナルドたち退治人は毎年その退治に奔走していた。しかし今年は珍しく数が少なく早くそれが片付いたからと、スマホを見たらドラルクからの『今日は来ないかい?』という一通のメール。
ドラルクから誘われるのは珍しかった。少し悩んだあと、今から行く、と返事を返せば『わかった!カボくんとノコくんも連れてきてくれるかな』と帰ってきて更に首を傾げるも、そういえば最近連れて行って無かったなと一度家に帰って二匹を連れて城に向かった。
いつも通りに重厚な扉を開いてリビングに向かえば、目の前にあったのがその豪勢な料理たちである。
『いらっしゃい。ロナルドくん』
「おう…なんだこれ?」
『ハロウィンパーティーしようと思って』
エプロン姿のままキッチンから出てきたドラルクの姿に、かわいいと思うも口には出さず。抱いていたカボと頭に乗せていたノコを床に下ろすと、近づいてきたジョンと遊ぶ様子に連れてきてよかったと少し笑う。
『毎年ジョンと二人でパーティーしているんだけど、今年はちょつと作りすぎちゃって…ロナルドくんこれたらいいなと思って連絡したんだけど…大丈夫だったかい?』
「ああ、今年は仕事早めに片付いたから別に大丈夫なんだが…作りすぎたって程があるだろ、これ」
『ジョンのリクエストに答えてたらこうなったんだよ。あとカボくんお誕生日だろう?それもお祝い出来たらなと思って』
カボくん用のケーキ作ったんだ、と一度キッチンに引っ込んだドラルクが小ぶりのホールケーキをもって戻ってくる姿を見て、ロナルドは天井を軽く仰いだ。
『え?どうしたの?ダメだった?あれ、カボくんってハロウィン生まれだよね??』
「…いや、間違ってねえけど…お前マジで俺をどうしたいんだ?」
『どう、とは?』
「ドラルク。俺、こないだお前に告白したよな?」
『え、あ、あぁ、うん』
「お前、OKしたよな?」
『…う、うん…だって、私も君のこと好きだったから…』
「俺も好きだ。だから告白した。で、その相手がだ。大量の料理作ってエプロンして出迎えてくれて、そのうえカボの誕生日までしっかり覚えててケーキつくるとか」
『…え、と…ダメだった…かな?』
「……ジョンにリクエストされて作りすぎたって言ったけど、これ作りすぎたのとカボの誕生日を口実に俺を呼ぼうとしてただろ」
『!!…ごめ』
「ちげぇよ、ばか。そんな事しなくても会いたきゃ呼べっていってんだよ」
ドラルクの手からホールケーキを奪い取ると、テーブルに置く。
『え、と……いいの?』
「いいも悪いもねえよ。お前が誘わなかったら俺が誘うからな」
『……うん』
嬉しそうな笑みを浮かべたドラルクにロナルドは顔を赤くする。それを誤魔化すように手を伸ばしてドラルクを緩く抱きしめると、擦り寄ってくる様子に少しだけ腕の力を強めた。
「会いたいってちゃんと言え」
『ふふ、君もね』
「俺は会いに来てんだろうが」
ドラルクを離すと、足元にカボが擦り寄ってきた。抱き上げると一緒に椅子に座る。
「それで?これ全部食えるのか?」
『結構作ったけど食べ切れる?』
「まあノコもカボも普通に飯食えるからな。ジョンもそこそこ大食いだろ?」
『ヌ!』
「まあ食い切れなかった分は明日にまわすか」
『ヌン!』
「よし。じゃあ食うか」
『うん、食べよう!』
ジョンとドラルクも椅子に座ったのを確認してから、ロナルドがグラスを持って掲げる。
『ハッピーハロウィンだ』
「あとハッピーバースデー、カボ、な?」
「ヌー!」
「カボ!」
「ノコ!」
二人と三匹の乾杯がリビングに響く。そしてハロウィンパーティーが始まった。