作戦成功

私の恋人はとても可愛い。
いや、見た目はしっかりと成人男性だしなんなら体つきもしっかりしているゴリラなんだがそういう話ではない。整った顔、長い睫毛、綺麗な瞳。見目は本当にとてつもなく、良い。中身は五歳児でゴリラなんだけども。ただそれが、私にとってはとてつもなく可愛いのだから仕方がない。
手を握っただけであわあわする姿とか、キスする時にぎゅっと目を瞑って唇を引き結ぶ姿とか。
可愛い。シてる最中だって甘えてくるみたいに擦り寄ってきたり、飛びそうになると縋るみたいにしてきたり。
……可愛いのだ。
だがしかし、ここ最近その可愛さと愛しさのあまり。
……毎日抱いてしまう。これはちょっとダメではなかろうかと思っている次第だ。
元々私はそんなに性に対しての欲は強くない。キスだけ、と思って触れていると、甘えるみたいに返されたり、拙い舌使いで応えてきたりするからどうしてもそのまま最後まで致してしまう。
ここ一週間は毎日してる。最後まで。
それもこれも、あのゴリラが可愛いからいけないのだ。
ロくんの負担や、自分の体力を考えると回数は減らした方がいいのは分かっている。
なので、今日はするのはやめようと思っているのに。

それなのに。

「…どら、こ…?」
キスだけでとろとろになるロナルドくんを目の前に、その決意がゆらぎそうになっている。
潤んだ瞳。火照った頬。濡れた唇。
今すぐ押し倒してぐちゃぐちゃにしたい衝動に駆られている。
駄目だ。紳士違反だ。
だってさっき私はロナルドくんになんて言った?
『今日はイチャイチャしたいから、最後までしない。キスだけしよう?』
とかすました顔で言わなかったか?
言ったな?間違いなく言った。
ロナルドくんも一瞬不思議そうな顔をしたが、うなづいてくれた。
だからキスをしたのだ。
しかし忘れていた。この可愛い恋人は、キスだけでとろっとろになるのを。
「どらこ……、ちゅー、は……?」
蕩けた顔でキスを強請ってくる。負けそうだ。
『ロナルドくん、もう今日は』
「なあ、もっと、ちゅー……」
『ん゛っ……』
やめようって言おうとしたのに甘えられて思わず天井を仰いだ。
これ以上したら押し倒す自信がある。だから、ちゅ、と軽く唇を合わせて離れた。
『今日はおしまい』
言えば、ロナルドくんの表情が不機嫌になった。
「なんでだよ……」
『今日はイチャイチャするだけっていっただろう』
「ちゅーならいいって、いったじゃん……」
『そうなんだけど』
「じゃあいいだろ……」
とすん、とソファに押し倒される。
「なぁ、どらこぉ、もっと、……してくれよ……?」
とろんとした気持ちよさそうな顔でキスを強請る恋人に。

私の決意はポキンと音を立てていとも簡単に折れてしまった。