――さむいねぇ。
隣を歩くやせっぽちの吸血鬼がそんなことを呟いた。
――お前がガリガリだからじゃねぇの。肉つけろよ。
――それが出来たら苦労せんわ。早く帰ろう。
少し早足で歩くドラ公を追いかけるように歩幅を大きくする。
――君は寒くないの?
――寒いに決まってんだろ。
――だよねぇ。昨日寝てる時ちょっと寒そうだったもん。
――エアコン温度上げたのお前かよ。
――ジョンのためだよ。でも乾燥するから上げるのも良くないね。君もジョンも、起きた時喉枯れてたし。
――掛け布団買うか
――それもいいけど、多分ずり落ちて意味なくなると思うよ。君の場合。
――じゃあ
ピタリと、ドラ公が足を止めた。
思わず俺も足を止める。
――湯たんぽ買おっか
――湯たんぽ…?
――うん、あれなら温かいしいいんじゃないかな。ねえ、ジョン?
――ヌヌンヌ!
――よし、じゃあそうしよう!
――おいこらまて!勝手に決めんな!
――アマヌンに売ってるよねー。ジョン用の小さいのとかもあるかな。
――おい聞けよドラ公っ
勝手に話を進めて、ドラ公は今度は軽い足取りで小走りする。
追いかけて腕を掴むと、びっくりしたのか砂になった。
――勝手に決めんな。
――いいじゃないか。必要なものなんだから。
砂から復活しながら楽しそうに言う。
お前が来てから、物が増えてんだよ。
キッチンとか、風呂場とか、色んなところに。
できるだけものを持たないようにしてたのに。そうしないと。
――ロナルドくん。
――なんだよ。
――はい、ジョン。
突然ジョンを手渡されて、反射的に受け取る。肩に乗せるとふわふわの腹毛が頬に触れた。
あったけぇなと思ったら、ドラ公が俺の両手を握った。
――?!なにして
――必要なものだよ。生きるために。
俺より体温が低いはずなのに。握るドラ公の手の温度がなんだか温かい気がした。
じわり、と触れている部分から温度が同じになる。
――なんだよ、それ。
何だか少し居心地が悪い感じがして、視線を逸らした。
ドラ公はそんな俺を見て、笑う。
2日後、人間用の湯たんぽとマジロ用の湯たんぽが一つずつ届いて。
また、この部屋に物が増えた。