自分勝手で、自信家で、我儘で、情緒もテンションもおかしくて、カッコつけで、外面ばっかり気にして。
はぁ、本当に君って疲れちゃうよね。
わざと分かりやすくついた溜息に、君はこちらを見るけれども自分のことだって分かってない。
まあそれでこそ君なんだけど。
今日だって何か変な吸血鬼と戦ったって言いながら高めのテンションで城に来た。全身粘液でべっとべとで。
驚いて死ななかったのを褒めて欲しい。
とりあえず風呂に入れて、服を洗濯して。
いつのまにか城に持ってきていた着替えを着せて、ご飯まで食べさせた。
それなのに君はまた飴なんか口にくわえてソファでスマホ見てる。
ねえ、君なにしにきたの?
追い返せば良かったんだろうけど、飛び込んできた君の瞳があんまりにもキラキラしてて楽しそうだったからそんな事出来なかったんだよ。
楽しそうに話す君の顔は、見ていてこちらも楽しくなる。
テンションの高さと、時折突拍子もないことを言い出すのはやめて欲しいけど。
常にスリルとネタを探している君からしてみたら、城にひきこもって世間を知らない私なんてつまらないはずなのに。
何故か君は当然のごとく『お前は強いだろ』と言い放つ。
確かに竜の一族だし、力は強いよ。ただし、本来の力が使えるならだけど。
でも私は引きこもりで虚弱だし、すぐ死ぬし、復活するにも時間がかかるし、どう考えても世間一般の『強い』とは程遠い気がする。
だけど君はそれを疑わない。
いつか私と戦って、それすらもロナ戦のネタにしようとしている。
頑固にも程がある。
だけど、そんな君が、城に来て笑っているのを見ると少しだけ安心する。
自分勝手で、自信家で、我儘で、情緒もテンションもおかしくて、カッコつけで、外面ばっかり気にして。
そんな君が、疲れた顔や、寂しそうな顔や、穏やかに笑う顔を見られるのが私だけだと思ってもいいのかな。
ガリ。
飴を噛む音がした。
洗濯したロナルドくんの服を干して、振り向くと青い瞳がこちらを見ている。
『どうかした?』
「べつに。それ、乾くのか?」
『うーん、すぐは無理だよ。乾燥機かけると痛みそうだから』
「別に傷んでもいいけどな……朝には乾くか?」
『多分乾くと思うよ』
「……ドラルク」
手招きされて名前を呼ばれる。
ああこれはいつものやつだな、と諦めて近づいた。
「ん」
ポンとソファの隣を叩いて促されるから、大人しく座った。
すると、膝の上にポスンと頭が乗る。
『……撫でていいのかい?』
「ん、許してやる」
私の膝は許可もなく枕にするくせに。
ふわりとした髪に手を差し込んで、ゆっくりと撫でると綺麗な青い瞳が伏せられる。勿体ない。見ていたいのに。
数分撫でていると、不意にロナルドくんの肩の力が抜けた。
そして、甘えるように手のひらに頭を擦り付ける。
ねえ、ロナルドくん。
自分勝手で、自信家で、我儘で、情緒もテンションもおかしくて、カッコつけで、外面ばっかり気にして。
君を演じるのは、疲れちゃうんでしょう?
だから君はここにくるんだ。
ここにいる時は、そんな事しなくていいって分かってるから。
疲れた時でも、寂しい時でも、甘えたい時でも。
私がここで迎えてくれるって分かってるから、君はここにくる。
ねえ、それって、なんでか考えたことある?
なんで私がどんな君でも迎え入れて、風呂に入れて、食事を作って、甘やかすか考えたことある?
髪を撫でる手を、首に滑らせて、普段見られない鎖骨辺りに触れる。
すると、ロナルドくんはごろりと上を向いて。
笑った。
「いいぜ、どうぞ?」
『……言ったな?泣いても知らないからな……』
ねえ、ロナルドくん。
分かってる、よね。君は。